Nanoha SS vol.3-1

  〜03 誕生日・前編〜

新暦75年 6月4日

「ほら、なのは‥‥しっかり」
「ほぇ‥‥‥‥フェイト‥‥ちゃん?」
「明日も朝から教導あるんだから、ちゃんとベッドで休んで、ね?」
 自分で立つこともおぼつかない状態のなのはを、フェイトはやっとの思いでベッドに寝かせる。
「ぅ‥‥ん。おやす‥‥――スー、スー」
 寝息を確認して、ベッドをコレでもかと独占している少女の横に腰掛ける。
 上掛けをかぶせ、前髪をかきあげても――なのはが目覚める気配は無い。
 ――よほど疲れているのかな。

 月明かりに照らされただけの部屋は――静かで、なのはの寝息以外聞こえない。
 むしろ、寝息が聞こえているとは思えないほどの――静寂。


 ――そうだ、やることがあったっけ。
 デスク前に座りなおすフェイト。
「さっきまで、あれだけみんなと騒いでたのにね――」
 あまりの静けさが、あまりに意外で――そんな独り言がこぼれてしまう。

 ――そう。
 2人とも――たった今、休憩所の喧騒から抜け出してきた所だった。
 明日のシフトがあるとはいえ、休憩所の騒ぎはもうしばらく続くだろう。
 なんたって今日は、はやての誕生日だもんね――。

「だからって飲み物にアルコールまぜるのはやりすぎだよ、はやて」
 そんなフェイトのつぶやきを聞いていたのは――2枚の写真。
 眠気で体をデスクに伏せていく自分を自覚しながら、その写真に目をやるフェイト。


 ――そうか。あれからもう‥‥‥‥――――。

*** ***



『――――。そーいえば、フェイトちゃんのお誕生日っていつなん? 私もお返しせな――』


 はやてと出会ってから、最初のはやてのお誕生日。
 私からのプレゼントを受け取ったはやてが、聞いたコト。

 その一言に‥‥私は答えられなかった。

『――――‥‥‥‥‥‥‥‥そのときは、ヨロシク、ね』

 そう返すのが精一杯で――。

『うん、任せとき』

 ――なんて。
 はやては――なにも聞かないで微笑ってくれた。
 はやてだって気になったはずなのに――。
 違和感に気付いたはずなのに――。
 

 ――どうして答えてあげられなかったのかな。

 ――いつか聞かれるのはわかってたのに。

 ――何気ない一言。

 ――私が、話すことを避けていたせいで、言わせてしまった、一言。


 私の――造られた日。


『7歳のお誕生日おめでとう! ――!!』
 そういって微笑みを浮かべるプレシア母さんの顔を、私は"記憶"している。
 そのときの天気や、日付だって覚えてる。
 1月の――日。

 でも、これは"アリシア"の誕生日だから――私のじゃなくて。
 だから――求めるモノがどこにあるのかわからなくて。


 どうしたらいいのかな?? アリシアお姉ちゃん――。



*** ***



 ――コンコン、――コンコン。

 ――帰ってきた時からフェイトの様子がおかしい。
 それは一種の確信めいた思いとなって、フェイトの母――リンディ・ハラオウンの心の中にあった。
 そして――、部屋にこもったきり、物音一つ立てない娘が気になり、こうしてドアをノックしている。

「フェイト、大丈夫?」
「‥‥‥‥」
 返事どころか物音一つなく、リンディの心中にも不安が募る。

 ――コンコン、――コンコン。

「フェイト、入るわね??」
 部屋主の反応を待たずにドアを開ける。

 闇に眼が慣れるまでの数瞬――その違和感にリンディはたじろいでしまう。
 部屋の中はカーテンを閉めてこそいないが、とても暗かった。
 儚げな月明かりが闇を際立たせすらある。


 そんな中にフェイトがいた。
 学習机に顔を伏せて‥‥手には何か持っているようだ。

 よく確かめようとフェイトのそばに近づいて――。
 リンディは、ようやく気付く。

 ――‥‥‥‥っく、‥‥ぅう‥‥‥‥ぁ、ぅ‥‥っく、‥‥――。

 隣にいながら、聞こえるかどうか。
 それほどに声を抑えて――フェイト・T・ハラオウンは泣いていた。
 泣き続けるフェイトに、リンディがそっと声をかける。

「フェイト」
「リンディ‥‥‥‥‥‥さん?」
 今気付いた――とでもいうように僅かに顔を上げるフェイト。
 リンディを見つめる視線は――痛いほど悲しげで。
 だから――。

「ええ。リンディ母さんですよ」
 そういいながら。
 リンディはフェイトの髪を優しくなでつづけた。

 ――私はここにいるわよ――。

 まるで、そうフェイトに伝えるかのように。
 リンディは何も言わず、彼女のそばにいる。

「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」

 しばしの沈黙があって――、ゆっくりと顔をあげるフェイト。
 リンディの顔を見上げようとして、――目を逸らす、うつむいてしまう。
 何度かそんなことを繰り返し――。

「リンディ‥‥母さん?」
「はい‥‥」

 リンディの返事をきっかけに。
 恐る恐る、リンディへと手を伸ばしていくフェイト。

 ――とまどいから、手が止まる。
 ――こわくて、手が震える。

 だって、"私"は――許してもらえなかったから。

 でも、今は。
 目の前にいるのは、――――さんだから。
 勇気をだして――ふりしぼって。


「‥‥リンディ母さん」
「うん‥‥。どうしたの? フェイト」

 手の中に確かな温もりを感じて。

「母さん!!」

 ――今は、安心して泣ける。


 フェイトはこの日初めて、――声を抑えずに泣いていた。



(To Be Continued)
===
(なかがき)
永らく春眠してしまい申し訳ありませんm(_ _)m
管理人のあさひ@駄文屋です

創作活動とはまさに"湯"のようなものだと痛感した春眠期間でございましたorz
実際、後編に当たる3-2も書き上がってはいませんで、ホント だめだめです。


とまぁ暗い話はホドホドに。
"6月4日""誕生日"で はやてのお話を期待してた人はスミマセン(==
一応そちらの構想はあるのですが、私にとっての"誕生日"はまずはフェイトを抜きには語れなかったので。

局通vol.12の原稿をやってて思いついたネタです。
こういう"キャラ背景"の種明かし系は好きなので。

StSに時間軸を置いたまま、A’s直後の話をするのに少々骨を折りましたww
時期的に丁度よかったゆーのもあるんですけどね。
(ならば当日にマスターをあげてしまえと いうのはご勘弁を)

ということで(?)、この話は続くのです。
後編については一言だけ。

「SSを書く上での基本方針は変えてません」


願わくば、哀れな駄文屋に"コメント"という名の"燃料"を投下していただければ、と思います

comment

管理者にだけメッセージを送る

色々な方がフェイトの誕生日のお話を紡ぎましたが、ほとんどなのはが絡んでくるんですね。
ハラオウンの家でそれにあたるのは初めて見ました。
単刀直入に、続きを楽しみに待っております。

このフェイトスキーが!
はい。こんばんは。雪奈・長月です。
甘いというか、切ないというか、そんな感じのするSSですね。
はやての誕生日をダシにフェイトネタですか。
気持ちは分かりますけどね。
私だったら、フェイトがフェイトになれた日を誕生日にしますね。
アリシアの分身ではなく、フェイト自身の意志を持った日。
その日が、私にとってのフェイトの誕生日ですね。
最後はリンディさんで締めましたね。
良い締めですね。たまらないです。




SSの感想について、私はクレームをよく喰らいます。
感想を求めていたら、SSは進まないと。
私のSSは意見がないと進めにくいのですよ。
まあ。言っても伝わらないのが現状ですがね。
では、そろそろ筆を置きます。

甘い作品なのかと思いきや、あいやまたこりゃ切ない;;
フェイトの誕生日…それはつまりフェイト・T・ハラオウンになった日なのかなと思います。
詳しい設定はたしかなかったですよね?

早速あり〜ですw

Zepharさん>
うーん。
むしろ、何故なのはが入るのかよく解らなかったりするんですが(^^;;
多いネタだろうとはおもったのですがねー。
情報Thanks! ですですb


雪奈さん>
>はやての誕生日をダシにフェイトネタ
どちらかというと"必要なパーツが揃うタイミング"がコレしか見つからなかったという方が正しいのですよねー(==

個人的には、
フェイトにとってのプレシア・テスタロッサって?
じゃあ、アリシア・テスタロッサは?
という"問いへの答"として書いている一面があります


きりうさん>
詳しい設定が無いからこそのSS書きの本領発揮
となれるよう全力をつくしますですよb

久しぶりです!
今回も素敵なお話ですね
フェイトにとっての「お母さん」という言葉がどれだけ大きい意味を持つのか考えさせられました

さちりかさん>
>フェイトにとっての「お母さん」という言葉がどれだけ大きい意味を持つのか
その話 折あらば、さちりかさんの考えを聞いてみたいなと思いますww
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京都の某K大・法学部生

職業:駄文屋という名のニート
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